FILE NO 331 宮崎と周辺の植物
ツチトリモチ Balanophora japonica Makino
土鳥黐 ツチトリモチ科
撮影日 2001.11.10
撮影場所 田野町

 三重県以西の暖地の自然林に自生する雌雄異株の多年草で、仲間はアジア等に80種、日本には5(7)種あるが、宮崎には 海岸林に生じるキイレツチトリモチ、標高900mぐらいまでの林内で見られるこのツチトリモチ、さらに高地にあるミヤマツチトリモチの3種がある。名の通り地中にある根茎を擂って鳥を捕らえる鳥黐として利用されていた。
 クロキ等ハイノキ属の木の根に寄生する。
 吸根を寄生体に侵入させて養分を吸収するのではなく、寄生主の根を体内に引き込んで吸収するという方法を取るらしい。
画像1 比較的明るい照葉樹林のハイノキ類の根を寄生主とするが、細い根の先が塊状に肥大したところにいくつかの根茎が接続する形で養分を吸収する。高さ5〜6cm。
画像2 地上部は、多肉の花茎を取り巻くような黄色みを帯びたさじ状の鱗片葉と、先端の長楕円形の毒々しい鮮紅色の花穂からなっている。
(撮影:2004.11.13 小林市)
画像3 落ち葉を取り除いて地面を掘ると根茎が見えてくる。花穂は長さ3.5cm、直径2.5cmほど。
(撮影:2004.11.7 宮崎市)
画像4 花穂表面は全面が柱状に突起した、直径0.6〜0.7ミリほどの小棍体に覆われている。
(撮影:2004.11.7 宮崎市)
画像5 根茎を突き破って伸びた花茎(赤い部分)を取り巻くような鱗片状の葉。
(撮影:2004.11.13 小林市)

画像6 花穂を縦断してみた。表面の赤い小棍体の下に黄色っぽい雌花がある。花穂には水気が多い。 (撮影:2004.11.7 宮崎市)

画像7 直径2.5cmほどの花穂の横断面。
  赤い小棍体の内側の厚さ1ミリほどの黄色い部分、雌花(子房)は外からは見えない。
 雌花に花被はなく、子房は紡錘状楕円体で花の盛期になると花柱は長く伸び出して、小棍体の間から柱頭が現われる。日本では雄株は発見されてないそうで、単位生殖により結実するらしい。(以上は平凡社の日本の野生植物U(1982年)等の説明を参考にした。) 微細な雌花の写真はデジカメ能力、私の撮影技術から撮影不能。
(撮影:2004.11.7 宮崎市)
画像8 花穂表面を覆う多数の小棍体の表面は少し凹んでいるのが特徴。
(撮影:2004.11.13 小林市)
画像9 雌花 爪で引っ掻いて黄色い雌花を露出させたが、僅jかに右奥部に子房らしきものが見える程度までの撮影がピントの限界。
(撮影:2004.11.13 画像8の生品)
画像10 根茎から突き出た花茎。根茎は複数に分れることもあり、見えないが脇には黒くなった古い根茎の残がいが残る。(撮影:画像9と同じ) 画像11 根の先が塊状になり、ジャガイモのような皮をした大小数個の根茎がくっつく。 この写真の根の直径は6ミリほど。(撮影:画像9と同じ)

画像12 掘り出した寄生根に付いた根茎と花茎。
水で洗う前の土が付いたままの写真。
周囲には多くの樹種があり、この根がどの木から伸びているかは特定できない。
(撮影:2004.11.13 小林市)
一般的に広くは、やまでらぼうず「山寺坊主」というが、こちらでは球磨の植物民族誌(地球社、乙益正隆著、1978年)に書かれているように(アカチンチンなど)と呼ばれている。

画像13 寄生根とその先の肥大した塊状部分。
(撮影:画像9と同じ)

画像14 画像11をバラしたもの。画面中央の寄生根の塊に接続部が見えるが根茎は簡単にはずれる。単体の根茎や、外した根茎枝、複数の枝になった根茎が見える。奥の2つの黒い固まりは古い根茎枝の残がい。(撮影:画像9と同じ)
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